わたし食べられる人 ぼく食べる人

彼の星がやけに明るく煌く日から
死人がゾロゾロ立ち上がり
のそのそ歩いたかと思ったら
人を食いまくる

こりゃかなわんと網にかけ
そのまま燃してやったら
これまた趣味の悪い設定で
燃えた灰が雨に混ざって
墓場の死体も動き出す

其処彼処で炎上している
不適切な表現に
其処彼処で燃え盛る
不適切な愛情の表現

うら若いカップルの片方も
やはりそいつらにやられて
生きてるうちの意識もあるまま
今や彼女に迫りつつ

往時とは違う男の欲望に
最初は嫌がっていた女も
ついに観念して差し出した
そのこうべを

男の歯がゆっくりと砕く
軋む音を聞きながら
ギュッとつむっていた眼を
彼女は最後に目をみひらいて

わたくしはその光景に
これこそ愛だと
あれ以上の愛情表現は
もうなかろうと思ったものだ

地上は今

其処彼処で炎上している
不適切な表現に
其処彼処で燃え盛る
不適切な愛情の表現

2月吉日
地下深い核シェルターにて