世界に傷つく女

地球さいごのひとりの女は
地球に ぼうとつったって
地球さいごのひとりの女
地球に つったっている

彼女がもし死んだら
それは人類の終わりであるが
彼女はひとり
ただ地球にひとりきり

もしも私が死んだら
それは人類の絶滅であるが
それを観測するものはなく
もし私が観測者であるとするなら
それは人類の絶滅というより
世界の消失にほかならず
それは人類の絶滅よりも重大である

ということだから
まずは
世界に傷をつけてやろうか

そして女はナイフを取った